色覚の仕組み

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2種類の視細胞

eye_model人間の目の網膜には、暗いときだけ働く杆体と明るいところだけで働く錐体の、2種類の視細胞があります。錐体には、L(赤)、M(緑)、S(青)の3種類があり、どのような波長の光を主に感じるか(分光感度)が異なっています。

C型色覚

c3種類の錐体がすべて揃っている人がC型(一般型)の色覚で、日本人男性の約95%、女性の99%以上を占めます。

P型色覚

p_kP型色覚(Protanope)には、3種の錐体のうち赤い光を主に感じるL錐体が無い人(P型強度)と、L錐体の分光感度がずれてM錐体と似通ってしまっている人(P型弱度)がいます。P型強度の人は右図のようにC型との見え方の差が大きく、P型弱度の人はC型との中間になります。
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D型色覚

d_k同様にD型色覚(Deuteranope)には、緑の光を主に感じるM錐体が無い人(D型強度)と、M錐体の分光感度がずれてL錐体と似通ってしまった人(D型弱度)がいます。色弱者のほとんどはこの4タイプ(P型強度・P型弱度・D型強度・D型弱度)で、合計で男性のほぼ5%を占めます。(欧米では男性 の8~10 %、アフリカでは2~4%です。)
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T型色覚

t-type青い光を主に感じるS錐体が無い人はT型(Tritanope)です。

A型色覚

a-type3種の錐体のうち1種類しか持たない人や、錐体が全く無く杆体しか持たない人はA型で、色を明暗でしか感じることができません。これはどちらも十万人に1人以下の割合です。
P型とD型は遺伝子がX染色体にあるので、男性では率が高く女性では数百人に1人ですが、T型とA型には男女の差はありません。

白内障

hakunaisyouこれら5種類7タイプの色覚以外に、目の疾患によっても色の見え方は変化します。白内障は目の水晶体(レンズ)が白く濁る疾患で、濁り方が激しいと短波長の青~緑の光を通さなくなります。また光が散乱するので像がぼやけて見えます。緑内障、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症は網膜の視細胞が少なくなる疾患で、視力が低下するとともに3種の錐体のうち数が少ないS錐体が一番影響を受けるため、T型色覚に近い見え方になります。これら眼疾患は人によって程度が大きく異なり、また視野の中心が主に影響を受ける人や周辺が主に影響を受ける人などさまざまなため、見え方の個人差が非常に大きいのが特徴です。

CUDOが用いている新しい色覚分類用語

日本では、血液型がA型の人が約4割、O型が3割、B型が2割、AB型が1割います。では、もしO型の人が大多数だったとしたら、O型だけが「血液型正常」で、A型やB型やAB型は「血液型異常」でしょうか?(実際南米のインディオでは、O型の人が9割を超えます。)血液型は人間の多様性の1つであって、どの血液型が正常でどれが異常と呼べるものではありません。

色覚も同じです。上に挙げたC型、P型、D型、T型、A型の色覚型は、血液型と同様に各自が持つ遺伝子のタイプによって決まります。従って血液型と同様に、どの色覚が正常でどれが異常というものではありません。

日本では(世界的でもそうですが)、人数が多いC 型を「色覚正常」や「健常」と呼び、人数が少ないP型以下のタイプを色覚「異常」や色覚「障害」と呼び慣わしてきました。これらの色覚は「色盲」として差別され、C型の色覚の人だけを念頭において色分けされた表示が読み取れないことから、多くの職業や学校で「不適性」として排除される歴史がありました。

最先端のゲノム生物学の研究成果では、人間がもつ約3万個の遺伝子はどれも非常に多様なタイプがあり、そのうちの1つを「正常」と呼ぶことはできないというのが定説になりつつあります。CUDOはこの流れに従い、従来のように色覚を「正常」と「異常」に線引きして分けるのをやめ、どの色覚も価値判断なく対等に分類するためにC、P、D、T、A の5種類の名前で呼ぶことを新たに提唱します(PとDはさらに強と弱に分かれる)。このうち人数が多いC型は、「正常」でなく「一般」色覚者と呼び、残りは色認識に弱い点があることから「色弱者」と呼びます。

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